犬のしつけ//どうしてしつけが必要?//しつけ方の基本
犬に「オスワリ」を教えるのはどうしてかわかりますか?
この記事では、「しつけが必要な理由」「しつけの注意」「具体的なしつけ方法」などのしつけの基本を説明します。
しつけが必要な理由
そもそも、犬のしつけはどうして必要なのでしょうか?
愛犬に「オスワリ」を教える飼い主さんは多いですが、
どうして「オスワリ」を教える必要があるのかを考えたことはありますか?
(私自身、当時は考えていませんでしたが。)
理由は複数あると思いますが、
一般的に次のような理由が挙げられます。
- 「興奮を落ち着かせ、飛び出し、噛みつきなどの
突発的な問題行動や、事故を未然に防ぐため」 - 「飼い主さんの指示を聞く姿勢を作るため」
このように、しつけは、愛犬が人間社会の中で
快適に安全に生きていくために必要なことなのです。
しつけが適切な時期
しつけをするのに適している時期は、
生後12週までの社会化期と言われる時期です。
社会化期は、様々なことを受け入れやすい時期で、
この時期の経験は将来的にも大きく影響します。
一般家庭に子犬が引き取られるのは、早くても生後8週前後です。
そのため、飼い主さんが社会化期の子犬に接することができる期間は長くありません。
多くの場合、飼い始めてから1か月ほどの期間になります。
ただし、時間はかかりますが、
社会化期以降も、しつけを覚えることはできます。
しつけの基本
基本1(望ましい行動を増やす)
個別のしつけ方法の前に、共通の注意点を説明します。
しつけの基本は、「褒めるしつけ」です。
愛犬が望ましい行動をしたとき、
例えば、「オスワリ」ができたとき、
「イイコ」と言って褒めます。
しかし、最初、愛犬は「イイコ」の意味も分かりません。
望ましい行動を覚えてもらうためには、
まず、「イイコ」=「褒め言葉(ごほうび)」
ということを覚えてもらう必要があります。
望ましい行動をしたとき、
(例えばオスワリなどができたとき)
最初は「おやつを与える」「なでる」などの
愛犬が喜ぶ「ごほうび」を与えます。
そして、「おやつ」などの「ごほうび」と
同時に「イイコ」と言います。
「同時に」がポイントです
繰り返すうちに、「イイコ」と言うだけで、
「ごほうび」をもらった時と同じ感情になります。
最後は、
「イイコ」と言われた
=褒められている
=自分が望ましい行動をした
とわかるようになります。
覚えてきたら、少しずつ「ごほうび」を減らしたり、
「イイコ」から「ごほうび」までの時間を長くしても大丈夫です。
※「イイコ」の代わりに「クリッカー」を使うのも効果的です。
この「褒めるしつけ」は、あとで説明する「オスワリ」「フセ」をはじめ、
様々なトレーニングで使うことができます。
基本2(問題行動を減らす)
愛犬が問題行動をしたとき、ついつい叱ってしまったり、
大きな声を出したりしてしまいますが、適切な方法ではありません。
- 毎回、同じように叱るのが難しい
- その場で叱るのが難しい
- ストレスで委縮してしまう、または別の問題行動を起こすようになる
- 信頼関係が崩れてしまう
など
では、どうしたらいいのでしょうか?
例えば、愛犬と遊んでいるときに手を甘噛みされてしまったら?
叱ったり、大きな声を出すのではなく、
遊ぶのを一旦中止します。
これを繰り返すうちに、愛犬は
「甘噛みをする」=「楽しいことが終わる」
と覚え、甘噛みをしなくなります。
つまり、
- 「何かの行動」をすると楽しいことが終わる
- 「何かの行動」をしなくなる
ということです。
ほかの例を挙げると
- 散歩中に引っ張ったら、歩くのをやめる
- フードを食べなかったら、お皿を下げる
などがあります。
しつけだけでは治らないことも
例えば、家の中で粗相をしてしまったとき、
トイレトレーニングをやり直すことだけが適切とは限りません。
しつけとは関係ない何かのストレスが
原因となっていることもあります。
人間もイライラしたとき、頭が痒いわけでもないのに、頭をかいたりするでしょ?
愛犬の様子をよく観察する、また、最近の生活環境に変化はなかったかを見直すなどして、ストレスの原因を解決してあげましょう。
- 引っ越して家が変わった
- 部屋の模様替えをした
- 子供が生まれるなど家族が増えた
- 新しいペットが増えた
しつけやトレーニングに厳しくなりすぎるのも
良くありません。
問題行動の一部は、”人の生活環境の中での問題”
つまり、”人の都合”であることを忘れてはいけません。
なわばりにはマーキングをすることも、
知らない動物が近づいてきたら警戒して吠えることも、
犬にとっては普通のことで、正常な行動です。
長年、狩猟犬や牧羊犬として人間と暮らしてきた犬種は、
本能的にほかの動物を追いかける性質を持っているはずです。
すべてのしつけを完璧するのではなく、
周囲の環境・人、自分のライフスタイル、愛犬の性格を
考慮して互いが幸せに暮らせるラインを見つけることが大切です。
しつけの具体例
オスワリ
教える理由
飛びつきなど、愛犬がとっさにする行動を防ぎ、危険から守る。
教え方
ここで説明するのはルアー法という方法で、
おやつ、フード、おもちゃなど(ルアーと言う)で誘導する方法です。
最初は、「オスワリ」と言いません
- ルアーを見せて、愛犬の鼻先に近づける
- ゆっくり愛犬の頭の上に動かす
- 愛犬が自然と座る姿勢になるように誘導する
- できたら必ず「イイコ」と褒めてあげましょう
※前述の基本1参照
※「ルアー」と「ごほうび」を混同しないように
これがスムーズにできるようになると
愛犬の頭の中でルアーの動きとオスワリの姿勢がつながります。
- まず「オスワリ」の号令
- 次にルアーでオスワリの姿勢をさせる
- できたら必ず「イイコ」と褒めてあげましょう
これを繰り返すうちに、
愛犬の頭の中で「オスワリの号令」と「オスワリの姿勢」がつながります。
少しづつルアーを減らしていくことをフェイディングと言います。
最後は、号令だけで「オスワリの姿勢」ができるようになります。
そして、必ず「イイコ」と褒めてあげましょう。
ご褒美として「おやつ」を与える場合も
必ず先に「イイコ」と言って褒めましょう。
飼い主が離れた場所から号令を出した場合、
「おやつ」はすぐに与えることができません。
まず、「イイコ」と言って、
その行動が正しかったことを教えてあげましょう。
①上手にできた
②すぐに「イイコ」と褒める
(または、クリッカーを鳴らす)
③「おやつ」を与える
(毎回与えなくていい)
を心がけましょう。
「おやつ」は毎回与える必要はありませんが、
コミュニケーションの一環として時々与えることで、
「イイコ」=「おやつ」=「うれしい」の結びつきが強くなります。
また、散歩が好きな愛犬であれば、「おやつ」の代わりに、
「散歩に出かけること」をご褒美にすることも有効です。
フセ
教える理由
愛犬とのお出かけで、ペット同伴OKの飲食店に入った時などに、
くつろいだ姿勢で待つことができる。
教え方
「オスワリ」と違うのは「Step1」だけです。
Step1 フセの姿勢を覚える
- ルアーを見せて、愛犬の鼻先に近づける
- ゆっくりルアーを下げて、前足の間まで下げる
- 愛犬がフセの姿勢になるように誘導する
あとは、「オスワリ」と同様の手順です。
「褒めるしつけ」を実践しましょう。
ハウス・クレートトレーニング
教える理由
寝るときや来客中などにクレートの中で静かに待てる。
教え方
まずはクレートの中は楽しいところだと思ってもらうことが大事です。
慣れるまでは、扉を外すか、開けておきましょう。
罰として閉じ込めておく場所にしてはいけません
教え方は次の手順です
- クレート内にフードを投げ込む
- 愛犬が中に入るときに「ハウス」と言う
- これを繰り返す
- 慣れてきたら、寝るときや留守番の時などにクレートの中で過ごしてもらう
※最初は30分程度の短い時間から始めましょう
広すぎると、落ち着かなかったり、
中で粗相をしてしまったりするので、
中で方向転換できるぎりぎりのサイズを選びましょう。
成長に合わせて、クレートを変えるのが理想的です。
これだけは気を付けて!!
社会化期にできるだけたくさんの経験をすることで、
将来的に人の生活環境に対応しやすくなります。
だからと言って、愛犬が嫌がるようなトレーニングをしてはいけません。
社会化期は様々なことを受け入れやすい時期ですが、一方で嫌な経験に対してトラウマになってしまうこともあります。
愛犬が望ましい行動を喜んで自発的にできるようにトレーニングをしましょう。
しつけ・トレーニングに困ったら
プロの手を借りるのも一つの手段です。
主に生後2~4か月(施設による)の子犬を対象に、
社会化を促進するための「パピークラス」というものがあります。
犬の社会化だけでなく、飼い主さんに対しても、
しつけの方法などを教えてくれるところもあるので、
初めて犬を飼う方や飼育が心配な方にお勧めです。
似たもので「パピーパーティー」があります。
主な違いは次の通り。
同じメンバーで、複数回に分けてレッスンをする。
人見知りなワンちゃん(飼い主さん)でも徐々になれることができる。
単発レッスンのため、毎回メンバーが異なる。
いろいろな人や犬と交流ができるが、
人見知りなワンちゃん(飼い主さん)にはハードルが高い可能性がある。
まとめ
- 愛犬が人間社会で快適に安全に生活するためにしつけは必要
- しつけの基本は「褒めるしつけ」
- まずは「イイコ」を覚えることから
- 問題行動を減らしたいときに叱ってはいけない
- 社会化期の嫌な経験はトラウマになってしまうことがある
- 社会化期のしつけはプロの手を借りるのもおすすめ